ボードゲームデザイナー界の「3K」をご存知でしょうか?
ボードゲーム黎明期からブームを牽引してきた、3人の伝説的なデザイナーです。
- ライナー・クニツィア (Reiner Knizia)
- ヴォルフガング・クラマー (Wolfgang Kramer)
- クラウス・トイバー (Klaus Teuber)
3人とも、名前の頭文字にKがつくため、このように呼ばれています。
そんな伝説的なデザイナー「3K」たちの輝かしい功績を、彼らの代表作とともに追ってみましょう。
ライナー・クニツィア (Reiner Knizia)
ボードゲーム界の巨匠!
自身のゲームを抱えるクニツィア氏。
左から「ヘックメック」、「ロストシティ」、「誰だったでしょう?」、「モダンアート」、「チグリス・ユーフラテス」。
ライナー・クニツィア氏は、これまでに700個以上ものボードゲームを制作した伝説的なボードゲームデザイナー。
「砂漠を越えて」、「ラー」、「サムライ」、「タージマハル」、「指輪物語ボードゲーム」、「アメン・ラー」、「ペンギンパーティ」、「ケルト」など、名前を上げたらきりがないほどです。
1957年にドイツのバイエルンで生まれたライナー・クニツィア氏。最初にボードゲームを作ったのはなんと8歳のときだという。
アメリカのシラキュース大学で修士課程を修了したクニツィア氏は、ドイツのウルム大学で博士号も取得しており、クニツィア博士とも呼ばれる。
では、ここからは、ライナー・クニツィア氏を代表作とともに、紹介していこう。
モダンアート(Modern Art)
この投稿をInstagramで見る
ライナー・クニツィア氏は競りゲームの制作を得意としていることで知られる。
中でも「メディチ」、「ラー」、「モダンアート」は、クニツィア氏の三大競りゲームと呼ばれている。
本作、モダンアートは、競りゲームの集大成とも言える完成度であり、クニツィア氏の代表作の一つ。
各プレイヤーが画商となり、人気の出そうな絵画を上手く競り落としたり、オークションに出したりして資産の獲得を目指す。
また、多作で知られるクニツィア氏は、同時に60~90個のボードゲームを制作するという。
オフィスには、90個の引き出しがあり、その中に作成中のボードゲームが入っている。
そんな中でもモダンアートは、制作に4~5年の年月をかけた、珍しい作品。
モダンアートは全4ラウンドから構成されているが、開発当初は、1ラウンド勝負だったらしい。
モダンアートは、世界中で色々なパッケージのものが販売されています。
ゲームの中身だけではなく、パッケージもまさに、モダンアート。家に飾りたくなる仕上がりです。
原題:Modern Art | 作者:Reiner Knizia | 発売年:1992年 |
人数:3~5人 | fa-clock-o時間:45分 | fa-user-plus年齢:10歳~ |
指輪物語ボードゲーム (The Lord of the Rings)
この投稿をInstagramで見る
クニツィア氏の作品の中で一番売れている作品は何か知っていますか?
実は、本作「指輪物語ボードゲーム」です。
17の言語版があり、トータルの売上は100万部以上。最大のヒット作となっています。
この投稿をInstagramで見る
指輪物語ボードゲームは、J.R.R.トールキンの小説「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)」をモチーフとしたボードゲーム。
プレイヤーたちは、冥王サウロンから「ひとつの指輪」を取り戻すために、協力しながら冒険を進めます。
本作は、ドイツ年間ゲーム大賞 文学特別賞を受賞しています。
クニツィア氏の、ドイツ年間ゲーム大賞での受賞は、2019年現在で下記の3回。
「指輪物語ボードゲーム」(2001年文学特別賞)、「ケルト」(2008年大賞)、「誰だったでしょう?」(2008年キッズゲーム大賞 )
原題:The Lord of the Rings | 作者:Reiner Knizia | 発売年:2001年 |
人数:2~5人 | fa-clock-o時間:60-120分 | fa-user-plus年齢:13歳~ |
ケルト(Keltis)
この投稿をInstagramで見る
クニツィア氏は、競りゲームが有名だが、それだけではない。
例えば本作「ケルト」は、カードで行うすごろくゲームであり、2008年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞した。
この投稿をInstagramで見る
駒を進めるほど点数が上がるのだが、ポイントは-4点から始まるところ。
大きな点数を狙うには進むしか無いが、中途半端に進むとマイナス点になってしまう。
クニツィア氏は、ゲーム内にジレンマをうまく取り入れる事で有名。
あちらを立てればこちらが立たずという状況はよく、クニツィアジレンマと呼ばれる。
また、「ケルト」は、クニツィア氏自身が1999年に発売した「ロストシティ」を手を加えて改良したもの。
もともと2人用だったがが、ケルトでは2~4人に広がった。
カードの順番が、昇順/降順を選べるようになった点や願いの石タイルなどにより、ぐっと面白さが上がっている。
原題:Keltis | 作者:Reiner Knizia | 発売年:2008年 |
人数:2~4人 | fa-clock-o時間:30分 | fa-user-plus年齢:10歳~ |
ヴォルフガング・クラマー (Wolfgang Kramer)
ドイツ年間ゲーム大賞、ドイツゲーム賞 受賞歴最多!
代表作と並ぶクラマー氏。
左奥から「勝利への道」、「ミッドナイトパーティー」、「書けた?」、「ティカル」、「エルグランデ」、「アルチュリアの市場」、「セルティカ」、「オーストラリア」、「アルケミスト」、「マシウス」、「トーレス」、「ニムト」。
クラマー氏は、1942年にドイツ、シュトゥットガルトで生まれた。
3Kと呼ばれるライナー・クニツィア氏、ヴォルフガング・クラマー氏、クラウス・トイバー氏の中では最も年上である。
もともとコンピューター関連の技術者で趣味としてボードゲームを制作していたが、1989年から専業のゲームデザイナーとなった。
「ニムト」、「エルグランデ」、「ティカル」あたりは、クラマー氏がデザインした有名な作品。その名を聞いた頃のある人が多いだろう。
作品の知名度もさることながら、クラマー氏の大きな功績は、ボードゲームのシステムの考案にある。
では、そんなクラマー氏の功績に関して、作品から紐解いていこう。
アンダーカバー(Heimlich & Co.)
クラマー氏の最も大きな功績の一つが、クラマーフレイム(クラマーライステ)の開発である。
クラマーフレイムとは、ゲームボード外周に設けた得点トラックのことであり、本作「アンダーカバー」で初めて導入された。
その後発表される実に多くのボードゲームに導入されることとなった実に画期的なシステムである。
アンダーカバーは、各プレイヤーの持ち駒が隠されていると言うタイプの先駆け的なゲームでもある。
リメイク後は、7人のスパイたちが、ぐっと現代的な絵柄になっている。
原題:Heimlich & Co. | 作者:Wolfgang Kramer | 発売年:1984年 |
人数:2~7人 | fa-clock-o時間:45分 | fa-user-plus年齢:8歳~ |
ティカル(Tikal)
クラマーフレイムに並ぶ、もう一つの大きな功績が「アクションポイント制」の導入であろう。
アクションポイント制とは、予め割り振られた行動ポイント数の中で、行動内容ごとに行動ポイントを消耗していくシステムである。
この仕組みが用いられているゲームとして、「ティカル」を紹介する。
ティカルは、森を探検して、遺跡の発掘や財宝を獲得して、勝利を目指すゲームである。
各プレイヤーは、10ポイントの行動ポイントをうまく使い、探索や発掘を行っていく。
クラマー氏の作品は、その多くが、ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされている。
そして、この「ティカル」を含め、そのうち5回が大賞受賞という快挙を成し遂げている。
本作以外の受賞作は、「アンダーカバー」、「アウフアクセ」、「エルグランデ」、「トーレス」。
ちなみに、ティカル(Tikal)は、ミヒャエル・キースリング氏との合作で、ドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞の2冠に輝く快挙を成し遂げた。
クラマー氏は、合作が多いことでも知られており、特にキースリング氏とのコンビは、ティカル以降も数々の名作を送り出している。
原題:Tikal | 作者:Wolfgang Kramer | 発売年:1999年 |
人数:2~4人 | fa-clock-o時間:90分 | fa-user-plus年齢:10歳~ |
ニムト(6nimmt!)
ご存知「ニムト」は1994年に発売されたお手軽なカードゲーム。
クラマー氏は、先述のような重めのゲームを作るのか得意なのかと思いきや、ニムトのように、世界中の老若男女にプレイされる名作を作ってみせる。
ところで、ニムトには続編があるのはご存知だろうか?
日本では赤箱ニムトと呼ばれる「Hornochsen!」である。
プラス点カードの追加や、手番ごとのプレイとなったことで、より戦略性の高いゲームとなった。
ここまで紹介したように、ウォルフガング・クラマー氏のボードゲーム界における功績は大きい。
2012年のドイツゲーム賞授賞式では、異例の特別表彰として生涯功労賞がクラマー氏に送られているが、その理由がわかっただろうか。
原題:6nimmt! | 作者:Wolfgang Kramer | 発売年:1994年 |
人数:2~10人 | fa-clock-o時間:30分 | fa-user-plus年齢:8歳~ |
クラウス・トイバー (Klaus Teuber)
カタンシリーズの生みの親!
カタンで有名なクラウス・トイバー氏。
クラウス・トイバー氏は1952年にドイツ ヘッセン州で生まれた。
カタンシリーズの生みの親として知られるが、トイバーの功績はカタンだけではない。
粘土を取り入れた「バルバロッサ」や、「貴族の務め」、「ドリュンター・ドリューバー」といった傑作も多数制作している。
では、順にみていこう。
カタンの開拓者(Die Siedler von Catan)
クラウス・トイバー氏は1999年に専業デザイナーになるまでは、歯科技工士として働きながら、ボードゲームを制作していた。
カタンの発売は、1995年。つまりこの歴史的大傑作も、仕事の傍らでデザインしたのである。
トイバー氏は、読んでいた小説をヒントに、無人島を発見したらどのような気持ちになるかを考え、そこから無人島の開拓ゲーム「カタン」を思いついたという。
言うまでもなく、それがトイバー氏の転機となった。
カタンは全世界で2500万部以上売れている。ヒットの桁が規格外である。
多彩なシリーズもカタンの魅力の一つ。
もっと知りたい!
原題:Die Siedler von Catan | 作者:Klaus Teuber | 発売年:1995年 |
人数:3~4人 | fa-clock-o時間:60分 | fa-user-plus年齢:8歳~ |
バルバロッサ(Barbarossa)
この投稿をInstagramで見る
トイバー氏の功績はカタンだけではない。多彩は作品を世に送り出している。
例えば、1988年に発売された「バルバロッサ」は、初めて商品化されたトイバー氏の作品である。
バルバロッサは、各自が作った粘土細工が何かを当て、自分の駒をゴールへ導くゲーム。
粘土細工とダイスゲームを合体させるという点には、デザイナーとしての並ならぬセンスが垣間見える。
バルバロッサは、トイバー氏が徴兵先での仮宿舎で、妻と子どもを楽しませるのに作ったのがきっかけだという。
なお、トイバー氏は、本作「バルバロッサ」で1988年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞した。
原題:Barbarossa | 作者:Klaus Teuber | 発売年:1988年 |
人数:3~6人 | fa-clock-o時間:20~60分 | fa-user-plus年齢:12歳~ |
貴族のつとめ (Adel verpflichtet)
「貴族のつとめ」は、1990年に始まったドイツゲーム賞の最初の受賞作。
さらには、ドイツ年間ゲーム大賞も受賞。
トイバー氏は本作で、いきなりダブル受賞という快挙を成し遂げた。
本作「貴族のつとめ」は、各プレイヤーが貴族となって、骨董品や芸術品のコレクションを収集し、展示します。
単にコレクションするに留まらず、他プレイヤーのもとへ泥棒を送り込んだり、探偵を雇ったりというアクションも面白い。
ちなみに、トイバー氏は「貴族のつとめ」の翌年に発表した「ドリュンター・ドリューバー」でもドイツ年間ゲーム大賞を受賞している。
1988年から1991年の4年間のうち、なんと3回もドイツ年間ゲーム大賞を受賞したのだ。
のちのカタンと合わせて、計4回のドイツ年間ゲーム大賞受賞を果たしている。
原題:Adel verpflichtet | 作者:Klaus Teuber | 発売年:1990年 |
人数:2~5人 | fa-clock-o時間:60~90分 | fa-user-plus年齢:12歳~ |
デザイナー界のレジェンド「3K」たちのゲームで遊ぼう
この記事で紹介しているゲーム
もっと知りたい!
歴代のボードゲームデザイナーたちの代表作を一挙に紹介します。あなたの好きなあのデザイナーの有名作品が受賞歴を調べてみましょう!
もっと知りたい!
1980年代から始まったドイツゲームブーム。現在も続くブームを牽引してきた歴史上重要なタイトルを紹介しています。
もっと知りたい!
1980年頃から始まったドイツゲームブーム前にも、実はボードゲームは一般に親しまれていました。中でも、四大古典ゲームと呼ばれる「モノポリー」、「ディプロマシー」、「リスク」、「アクワイア」は、特に有名で、全世界でプレイされる歴史的な傑作ゲームです。是非合わせて読んでみてください。
もっと知りたい!
この記事は、BOARD GAME GUIDE 500 を参考に作成しています。
ボードゲーム専門店の店長であり、有名ゲームの日本語版制作も手掛ける田中誠氏がボードゲームを紹介。
約500ものボードゲームや、進化の歴史がわかり、ボードゲームの知識が一気に広がる一冊です。